回転自由度を考慮した実験モード解析法


機械構造物の動特性(揺れ方など)を把握して、それを動的な設計に利用することで、揺れなくて静かな製品を作るための基盤的な技術として、実験モード解析があります。通常は、実験者がインパルスハンマなどで機械構造物を叩き(加振入力を作用させ)、そのときの応答(出力)を計測することで、周波数応答関数(出力/入力)を求めます。
一般的には、入力は力、出力は加速度(速度、変位)となります。このとき、周波数応答関数は、並進3自由度のみの成分を持つことになります。しかし、実際の機械構造物には、力のモーメントが入力として作用するときもありますし、角加速度(角速度、角変位)が出力となるときもあります。この力のモーメントを入力、角加速度を出力としたときの周波数応答関数を、回転自由度に関する周波数応答関数と言います。
従来の振動実験では、実際の機械構造物の物理現象を再現できないことが問題視されています。
これを解決するために、機械構造物にT-blockまたはT2-blockを取り付けるだけで、回転自由度に関する周波数応答関数を実験的に計測することに成功しました。
3次元立体構造物の動特性予測を行いました。黒色の線が本手法、橙色の線が有限要素解析、でそれぞれ求めた結果です。両者は非常に良く一致しています。
これを用いることで、自動車など低振動低騒音設計に活用されている伝達経路解析の解析精度の向上が期待できます。

 


本手法を自動車のサブフレームの振動実験に適用しました。青色の線が本手法、赤色の線が有限要素解析、でそれぞれ求めた回転自由度に関する周波数応答関数です。実際の構造物に対しても、本手法は十分な精度を有していることがわかります。

https://doi.org/10.1299/kikaic.67.1470
https://doi.org/10.1299/kikaic.68.1140
https://doi.org/10.1299/kikaic.70.1672

レーザーアブレーションによるモーメント加振法

 

振動実験におけるセンサ質量の影響補正

 

加振困難な複雑構造物の振動実験


振動実験では、対象構造物に何らかの入力(加振力)を与え、そのときの入力と揺れ方(応答)をそれぞれ計測します。多くの場合、加振力を与えるためには、インパルスハンマ(人間が叩く)や加振器などを使います。そのとき、自動車などの構造物では、インパルスハンマで叩けないような狭い場所があります。これを解決するために、叩けない場所に小さな付加質量を取り付けることで、叩きたい場所を叩かずに振動実験する方法を実現しました。
右のグラフを見ると、橙色の線が実際のデータ、黒色の線が本手法のデータです。両者はよく一致しています。

https://doi.org/10.1016/j.jsv.2014.09.033

空間フィルタを用いた非破壊検査

機械の実稼働時の加振力・モーメントの同定

論文投稿中

 

レーザーアブレーションによる非接触振動実験法

パルスレーザーを用いた音響実験(点音源の生成)

レーザーアブレーションによる水中構造物の動特性評価

レーザーアブレーションによる動特性評価

論文投稿中

 

人工筋肉スピーカー

半球形スピーカ


本研究では、人工筋肉として、誘電エラストマーアクチュエータを用いています。誘電エラストマーアクチュエータとは、ゴム状の薄い高分子誘電膜を伸び縮み可能な柔軟電極では挟んだキャパシタ構造になっています。電極間に電位差を与えると静電力により電極同士が互いに引き合い、高分子膜が面外方向に収縮し、面内方向に伸張します。これを超高速で駆動させることで、音を作り出します。
半球形なので、通常のスピーカよりも広範囲に音を作り出すことができます(16 kHz)。また、非常に軽量で、本スピーカーはおよそ5gです。

風船スピーカ


半球形スピーカをさらに改良して、風船スピーカも実現しました。半球形スピーカよりも広範囲に音が作り出せます(16 kHz)。


レーザードップラー振動計で可視化した、風船スピーカが振動している様子(500 Hz)。
動画は,以下のサイトにあります。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003682X1830495X#m0005
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003682X1830495X#m0010
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003682X1830495X#m0015

半球形スピーカ   https://doi.org/10.1121/1.4934550
風船スピーカ    https://doi.org/10.1016/j.apacoust.2018.12.032

ねじ締結体の緩み検出(国際共同)

押さえボルト


押さえボルトのボルト頭部がある振動数で揺れます。その振動数とボルトの緩み度合を調べることで、緩みの検出に成功しました。本手法では、振動実験用デバイスとして市販されているインパルスハンマ、加速度センサを使います。また、解析手法としては、基盤技術として広く使われている実験モード解析を使います。非常に安価に、そして正確に押さえボルトの緩みを検出することができます。
本研究は、University of Riau (Indonesia)のFeblil Huda先生との国際共同研究です。

https://doi.org/10.1007/s10921-018-0528-7

 

通しボルト


ボルトとナットにより、締結する機械構造物もたくさんあります。本研究では、ナットから飛び出したねじ部(ねじ突出部)を片持ちはりとみなします。この片持ちはりの固有振動数とボルト/ナット締結体の緩みの度合いを調べることで、緩みの検出に成功しました。この方法も、振動実験用デバイスとして市販されているインパルスハンマ、加速度センサ、そして、実験モード解析を使います。非常に安価に、そして正確に通しボルトの緩みを検出することができます。
本研究は、University of Edinburgh (United Kingdom)のFrancesco Giorgio-Serchi先生との国際共同研究です。

https://doi.org/10.1016/j.measurement.2020.107914

青果物の成熟度評価、品質評価

八百屋さんですいかを叩いて、良いものを選んでいる様子を見たことがあると思います。これは、果物を振動させ、その時の反応(応答)を振動と音により判別していることになります。
本研究では、青果物を触らずに振動させ、その時の振動応答を非接触で計測することで、青果物の硬さを評価します。青果物の硬さは、熟度と相関があると言われています。そして、熟度は美味しさとの関係が深いと言われています。

レーザー誘起プラズマ衝撃波によるりんごの硬さ評価(固有振動数)


レーザー誘起プラズマ衝撃波
https://youtu.be/eY9KHeoVSH0

レーザー誘起プラズマ衝撃波をりんごの果皮の近くで生成します。この衝撃波がりんごを振動させます。そのときの振動応答をレーザードップラー振動計で計測します。

左図(上)は、りんごの固有振動モード形状を示しています。それぞれ、0S2モード、0S3モード、0S4モードと呼ばれます。0S2モードの振動数が、果物の熟度との相関が強いと言われています。りんごを冷蔵庫で保管しながら、この0S2モードの振動数を計測しました。
左図(下)が固有振動数(周波数スペクトル)を示しています。保管日数の増加に伴い、固有振動数が低下を計測することに成功しました。

 

レーザー誘起プラズマ衝撃波によるマンゴーの硬さ評価(Rayleigh波)


上の写真のように、マンゴーを設置します。マンゴーの果皮近傍に、レーザー誘起プラズマ衝撃波を生成します。この衝撃波が加振力となり、マンゴー果皮にRayleighはを生成します。このRayleighはの伝播をレーザードップラー振動計で計測します。


Rayleigh波の速度は、上図(右)のようになります。保管しながら、Rayleigh波の伝播速度を計測しました。保管日数が増加するに従い、Rayleigh波の伝播速度が低下しました。これにより、マンゴーの果肉が柔らかくなっていることがわかりました。

りんご https://doi.org/10.1016/j.postharvbio.2017.01.014
マンゴー https://doi.org/10.3390/foods10020323

インフラ構造物の遠隔非破壊検査

論文投稿中

物体射出による疑似非接触振動試験法

 

レーザーアブレーションやレーザー誘起プラズマ衝撃波を用いることで、非接触かつ理想的なインパルス加振力を生成できます。しかし、加振力に含まれる周波数成分や加振力の大きさの制御は、容易にできません。そこで、球体を射出し、それを対象構造物に当てることで、加振力を作用させ、疑似的に非接触な振動実験を実現しました。球体を対象構造物に当てるため、接触式デバイスと同じように思われるかもしれません。例えば、実稼働中の回転機械を検査員がハンマー叩き、打音試験を行えば、検査員が巻き込まれ事故が発生する恐れがあります。しかし、物体射出法では、球体にはケーブルなどが取り付けられていないため、検査員が巻き込まれる事故は発生しません。さらに、この方法は、レーザーを用いた方法に比べ格段に安価で実現できます。
20 kHz程度までの周波数帯域であれば、レーザー加振技術とほぼ同じ精度で振動実験を行うことができます。

https://doi.org/10.1016/j.ymssp.2019.106295

航空機構造の非破壊検査

 

Lamb波は、減衰が小さいため伝播距離が長いという特徴を有することから、これを用いた損傷検知に関するいくつかの研究が行われています。接触式デバイスで単一周波数のLamb波を生成することにより、損傷検知を検討している研究があります。しかし、生成されたLamb波の振幅値が小さく、計測における信号雑音比を改善するためには数百回程度の平均化回数が必要となります。そのため、航空機のような大型構造物の広域損傷検知を短時間で実現することは難しいです。
本研究では、レーザーアブレーション(Laser ablation: LA) 、または、レーザー誘起プラズマ(Laser-induced plasma: LIP)衝撃波を用いて、Lamb波を生成します。そして、ジュラルミン平板に人工的に設けられた貫通亀裂の検知に成功しました。


貫通亀裂なしとありを比べますと、損傷がある場合は、波動の伝播の様子が異なるのがわかります。
動画は,以下のサイトにあります。
https://www.youtube.com/watch?v=YcrNJdA9zR4

レーザーアブレーション https://doi.org/10.1177/1077546316687904
レーザー誘起プラズマ衝撃波 https://doi.org/10.1016/j.ijmecsci.2018.03.023

ハイドロゲルの機械的性質の同定


金属や比較的硬い高分子材料などであれば、それを把持して引張試験をすれば、その材料の強さを知ることができます。しかし、こんにゃくのような柔らかいものでは、把持することも引張試験することも難しくなります。また、引張試験はテストピースを破壊してしまうという問題があります。こんにゃくのようなハイドロゲルに、レーザーアブレーションにより加振力を作用させ、ハイドロゲル内部に伝播するP波やS波をシュリーレン法により可視化します。これらの伝播速度を使うことで、非接触非破壊でハイドロゲルの機械的性質(ヤング率、ポアソン比)を同定することに成功しました。

様々なハイドロゲルの波動伝播の動画は以下のサイトにあります。
最も柔らかい
https://aip.scitation.org/doi/suppl/10.1063/1.4964305/suppl_file/movies1%28gela1_energy444mj%29.mov
https://aip.scitation.org/doi/suppl/10.1063/1.4964305/suppl_file/movies2%28gela1_energy748mj%29.mov
中くらいの柔らかさ
https://aip.scitation.org/doi/suppl/10.1063/1.4964305/suppl_file/movies4%28gela2_energy748mj%29.mov
最も硬い
https://aip.scitation.org/doi/suppl/10.1063/1.4964305/suppl_file/movies6%28gela3_energy748mj%29.mov

https://doi.org/10.1063/1.4964305

透明高分子材料の非破壊検査

 

透明高分子材料に、レーザーアブレーション、または、レーザー誘起プラズマ衝撃波をインパルス加振として作用させます。そして、透明高分子材料に弾性波を生成し、これを光学的な手法により可視化、計測することで、損傷を検出したり、ヤング率などを同定したりします。

レーザー誘起プラズマ衝撃波により、ポリカーボネート平板にS0モードのLamb波を生成します。これを偏光高速度カメラで可視化することに成功しました。そして、数百マイクロメートルのひっかき傷を検出することができました。
https://doi.org/10.1016/j.optlaseng.2021.106770

 

レーザーアブレーションにより,アクリル平板にP波やS波を生成します.これを偏光高速度カメラで可視化することに成功しました.アクリル平板にある数百メートル程度のひっかき傷を検出することができました.
https://doi.org/10.1007/s11340-015-0089-y

スチールパンの振動音響解析(折り曲げによる低振動低騒音設計の最適化)


 

スティールパンという楽器があります。これは、ドラム缶の底を球殻状に変形させます。折り曲げを上手に使うことで、叩く場所により異なる音階となります。倍音も通常の楽器と違いますので、独特な音色となります。これを実験モード解析により明らかにしました。また、この折り曲げを薄板構造物に適用したところ、特定の振動モードの振幅を32%も低減すること(低振動化)に成功しました。

新しい燃料に関する研究

論文投稿中

振動試験における燃焼の利用

論文投稿中

偏光干渉計による振動試験

論文準備中

エラストグラフィー

論文準備中

環境負荷の小さい新しい複合材料

論文準備中