2009年度 学部生卒業研究テーマ

  超微細ステンレス鋼の材料特性評価

金属の高強度化には添加物を加える合金化が一般的ですが,合金化はリサイクル性が悪く,人体に害を及ぼす物もあります.そこで結晶粒を微細化することで強度が向上するという金属の性質を利用した,ECAPという加工方法があります.このECAPを利用して本研究室では,超微細組織を有するステンレス鋼の開発と特性評価を行っています.そして最終的には,ECAPにより人体適合性が高いとされるNiを含まない高窒化ステンレス鋼の高強度化を目指しています.
(写真:万能試験機とせん断変形加工機)


  FEMによるせん断変形加工金型の最適化

ECAPを行う際,せん断変形加工機を使用しますが,実験中において加工機内部でどのような問題が発生しているかがよくわかっていません.本研究では構造解析を用いて複雑な形状の加工機全体を解析します.そして,力の集中している点や変形状態を計算し,加工機を現状より小型化,部品の削減等の最適化を図ります.
(写真:FEM解析の例題)

超微細ステンレス鋼の精密切削特性評価

オーステナイト系ステンレス鋼は切削するときに加工誘起マルテンサイトという組織が発生します.この組織は堅く切削加工は困難となります.しかし,金属結晶の大きさや組織の流れに注目することで高強度にもかかわらず切削時の抵抗を低減できる可能性があります.そこで本研究では,くり返しせん断変形加工によって高強度化された材料を製品へと加工する際の切削状況を想定し,材料に対しての切削方向など様々な条件を考慮して,“よりきれいに・より簡単に”加工が行える条件を調査するものです.

 超微細組織材の摩擦圧接装置の改良および特性評価

くり返しせん断変形加工(ECAP)された試験片は金属組織が微細化し,高強度化します.昨年度は汎用旋盤を利用し摩擦圧接装置を製作しました.今年度は昨年度に引き続きECAPした試験片を摩擦圧接という方法で接合した試験片の金属組織変化,接合状態の調査,摩擦圧接装置の改良を行います.
(写真:使用する汎用旋盤,摩擦圧接装置(白く囲んだ部分))


オーステナイト系ステンレス鋼の磁気特性の方位依存性

配管用継手の材料であるステンレス鋼に塑性変形を加えるとマルテンサイトという組織が発生します.この組織が多く発生するほど硬さが大きくなり,大きな磁場を発生するようになります.この特性を利用し,磁場を測定することで硬さの推定を行うことをこの研究の目的です.この磁場を効率よく測定するために,X線回折で組織の観察を行い,磁気の方位依存性を調査します.この結果から磁気センサをどの向きに当てるのがより効果的なのかが分かると思われます.

ステンレス鋼の圧縮成形特性

ステンレス鋼は塑性加工によって製品を製造するにあたって圧縮成形特性が重要となります.この研究は圧縮加工の際に温度や速度や圧縮率においてステンレス材にどのように影響を与えて変化を生じるかを基礎的なテータを取り扱い調べるものです

  ステンレス鋼における高速切削条件下での表面創成

ステンレス鋼は元々削りにくい金属ですが,現在様々な用途があり生産コストを低減することが望まれています.本研究は、超高速で切削し、後に適切な仕上げを施すことで加工に必要な総時間の短縮を実現させることが目的です.具体的には,超高速切削をした時に材料表面がどのように変質するのか,きれいな表面を作り込むには,どうしたら良いかを考えることです.昨年度は一回の仕上げ加工で望むべき材料表面が得られましたが,材料表面がどのように変質するのか規則性が得られませんでした.そこで,新たな評価方法として切削時の温度を測ることにより,規則性を解明します.
(写真:マシニングセンタ)

 AEセンサーによる硬質被膜の破壊状況計測

現在多くの工具,金型等に耐摩耗性や摩擦係数の低減のために硬質被膜という膜のコーティングがよく行われています.しかし,この硬質被膜も壊れてしまうことがあり,壊れると使い物のならなくなってしまいます.そこで被膜のAEセンサーを使用して被膜の破壊実験・計測を行い,被膜が壊れたか壊れてないかの判別をできるようにすることを目的として研究をしています.
(写真:球押し込み試験)

 NC工作機械のDNCシステム構築

 機械加工における自動化は,NC工作機械の開発以降急速に発展してきました.現在ではNC工作機械をコンピュータによって制御するDNCシステムによって,NC工作機械の単独運用と比較すると運用効率は飛躍的に上がりました.本研究室には2台のNC工作機械が設置されていますが,現在は単独で運用されている状態です.本研究ではこれらのNC工作機械をDNCシステムによって運用することを目的としています.
(写真:マシニングセンタ(森精機CV-500))

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